
しかしトロント市におけるウォーターフロント開発公社コンセプトは成功に至らなかった。そこで政府調査機関(トロントウォーターフロントの将来に関する王立委員会)が別の組織形態つまり調整団体を設置するよう提案した。このような経緯でウォーターフロント・リジェネレーション・トラストが1992年に設立され、その後キングストンからナイアガラまでのオンタリオ湖岸一帯(人口450万、500キロに及ぶ地域)を管理運営することになった。ウォーターフロント・リジエネレーション・トラストとWAVEにはいくつかの共通点がみられる。つまり両組織ともしっかりした計画設定と、ウォーターフロント投資者を募ることに焦点をあてていることである。
共同研究プログラム期間に視察した日本のウォーターフロント6ヵ所は強い印象を与えるものであった。これらのウォーターフロントは、日本の設計業者および建設業者が採用した方針が、トロント(オンタリオ湖)ウォーターフロントに現在採用されている方針と同様であることを実証するものである。すなわち、生活、労働、遊戯の用途を併せ持つ場であること、公園やオープンスペースを含むウォーターフロントのパブリックアクセスの整備、景観の保護、環境への配慮、そして陸海空が接合する特別な地点としてのウォーターフロントに対する包括的認識である。
これら6ヶ所のウォーターフロントはそれぞれはっきりとした独自の開発を遂げており、地理、設計、機能上における専門家の意見が強く反映されている。同様に、それらの独自性は歴史、文化、将来を考慮に入れたランドマーク建築物の設計と建設を通しても表現されている。
公共団体つまり地域の港湾管理者、地方公共団体、中央政府は、これらのウォーターフロントの開発計画に大きな役割を担っており、WAVEがこれの調整役となる。ただし民間企業参入の余地はある。
トロントでは対称的に上級政府の役割は縮小しており、むしろ財政秩序の再建と回復にそのエネルギーを傾けている。地方公共団体の役割が見直される一方、より大きな余地が民間部門の企業に与えられることになり、この傾向は強まりつつある。トロントが21世紀に移行する際、ウォーターフロント・リジェネレーション・トラストが敷いた方針の枠組みのなかで、ウォーターフロント開発の主力エンジンとなるのは民間部門(地方企業から国際企業に至るまで)である。
21世紀に向けての準備を進めるなか、下記に示す案が日本のウォーターフロント開発の策定の一助となることを望む。
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